台所に立つことの動機は、やはり「お腹がすいた」、「おいしいものが食べたい」、それで十分なのだ。シャンソン歌手「藤原素子」が綴る、日々の、普通の食卓のレシピ

貧すれど鈍せず

春待人

久しぶりに食べ物について書く気力が出た。
というのも、この冬は本当に体調管理が難しく、風邪で苦しんだからだ。風邪クスリで胃をやられてしまい、初めて「食欲がない」という経験もした。ビールを飲んで「まずい」と思ったのも初めてだった。

やっと風邪も治り、食欲も出てきた。
・・・と思ったら、今度は歌の先生が風邪をひいたとの電話。予定外の二連休。ここのところ分刻みで走り回っていたのでちょうどいい機会だ。久々に引きこもりを決めて、一歩もウチから出ないことにした。
ついでに譜面書きもやっつけてしまおう。

朝ゆっくり起きて、譜面にとりかかる。食事をすると集中できないので、朝メシ前というわけだ。何曲か書くうちに、正午もすぎ、1時も過ぎる。

だんだん頭の中が、「音楽」から「食べ物」へ犯されていく。もう限界というところでちょうどキリがついた。さて、食事の支度だ。

パッとつくって早く食べたい。
ラーメンの辛みそ味があったので、麺を茹でる。フライパンでニラを炒め、とき卵を流し入れてニラ玉を作る。おっと、しらすが残っていたので卵に混ぜよう。
これをラーメンにのせれば、しらす入り天津ラーメンだ。

副菜は大根の葉の炒め煮。ここのところ、宅配の野菜に葉つき大根が入ってくる。届いたらすぐに葉を切り落として刻んで茹でる。これを油で炒めて酒や醤油で調理するのが定番の常備菜だが、少々飽きた。今回は野菜の中にふきのとうが入っていたので、つぼみの部分を刻んで一緒に炒める。ニンジンも細切りにして加えると、彩りも春らしい一品になった。

ふきのとう、たらの芽、うどなどの春の山菜、一度は天ぷらもいいが、天ぷらにするとどれも同じ味になってしまう。ましてやスーパーで売っている山菜などは、揚げるとたちまち香りも飛んでしまう。

ふきのとうの葉の部分は春菊などと一緒に茹でて胡麻和えにすると、本当に春の味がする。つぼみは大根葉と炒め煮だ。
たらの芽もさっと茹でて煮びたし。うどは皮を厚くむいてきんぴらに、中身は酢味噌で食べる。

今年は本当に暖冬だが、風邪に悩まされた冬でもあった。春の味覚の山菜が、ことのほか嬉しい春である。


(2007.3.19)



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