台所に立つことの動機は、やはり「お腹がすいた」、「おいしいものが食べたい」、それで十分なのだ。シャンソン歌手「藤原素子」が綴る、日々の、普通の食卓のレシピ

貧すれど鈍せず

ラムレーズンアイスクリーム

夕べは、女三人でうだうだ過ごした。
日頃のうっぷんを晴らすかのように、夜中じゅうしゃべる。

この日のコンセプトは、「うだうだ過ごす」と決めていた。
それぞれに忙しい日々を送っているので、のんびりした休日を過ごしたい。
海外か温泉にでも行きたいところだが、お金もかかることだし、私の家でごろごろしようという話しになったのだ。

夕食をとったあとも、持って来てくれたイチゴを食べたりしながら、うだうだしていたのだが、実はその間、私はひそかに翌日の朝食の準備をしていた。

私は普段、3時くらいに寝て、朝は10時に起きる。
仕事がある日は、帰宅が深夜になってしまい、それから作業を始めたりするからだ。 深夜のほうが仕事がはかどるし、電話で邪魔されることもない。
会社にアルバイトに通っていた頃もあったが、辞めたとたんに、夜型人間に戻ってしまった。
夜中に元気になるかわりに、午前中はボーっとしている。

ボーっとしているまま、朝食を作る気持ちにはならないので、夜のうちに準備をしておくことにしたのだ。
米をといでタイマーをセットしておく。
友達が大根を持ってきてくれたので、米のとぎ汁で下茹したのち、ふろふき大根にする。
翌朝には味がしみているだろう。
味付けは、めんどうなので、ソバツユを水でのばしたものに、砂糖を少々いれて、あとはホッタラかしておけばいい。
朝、厚揚げを入れて煮返すことにする。

大根の葉の部分は、きざんでごま油で炒め、砂糖、酒、醤油で味をつけて、かつお節を混ぜる。

ほうれん草はさっと茹でて、水気をしぼってから、冷蔵庫にいれておく。
朝は、つくっておいたゴマ和えのタレで和えればいい。

今が旬の、葉玉ねぎも茹でておく。
これは「ぬた」には最適なネギだ。
長くて太いもの5、6本が束になっていて、198円という安さ。
根っこちかくの、白いところは天ぷらにしてもおいしい。

夕食にサラダとして使ったうどは、皮の部分をきんぴらにしておいた。
あとは、ししゃもでも焼いて、漬け物と梅干があれば、完璧な朝食の完成だ。

私は普段、朝食をとらない。
というよりも、起きてしばらくすると昼なので、一回目の食事が昼ごはん、になってしまうのである。
昼になると、不思議なもので、「ごはんとみそ汁」的なものではなく、うどんやパスタなどが食べたくなってくる。
今日は久々の、朝食的メニューなので、なおさらはりきってしまうのだ。

これだけの下準備をしておけば、ボーっとしていても、大丈夫。
魚をロースターに入れておく間に、ほうれん草を和えたりしながら、皿に盛ってゆくだけだ。

かくして私は、二人の友人から「料理上手」の勲章をもらうこととなった。

ところで、この友人のうち一人は、アルコールをほとんど飲まない。
一緒に食事に行くときは、私がお酒を飲むぶん、彼女は必ずデザートをとる。
おそらく、今回私がつくったものの中で、一番彼女にウケたのは、ラムレーズンアイスクリームだったのではないかと思うので、紹介しておく。

干しぶどうは、ひたひたの水でしばらく煮た後、ザルにあげて冷ます。
これをビンにでも入れて、ラム酒を注いでおく。
バニラアイスクリームの上に注げば、コジャレた喫茶店なら800円も出しても惜しくないデザートになる。

ちょっと心配したが、案の定、この友人は少し酔ってしまったようだ。
私が男だったらよかったのに。



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