台所に立つことの動機は、やはり「お腹がすいた」、「おいしいものが食べたい」、それで十分なのだ。シャンソン歌手「藤原素子」が綴る、日々の、普通の食卓のレシピ

貧すれど鈍せず

ラーメン

私の一番目の姉は、カナダに住んでいる。
オタワに永住している日本人と結婚したのだ。

昨年、彼女は3年ぶりに日本に里帰りした。

成田から下りたって、電車に向かう途中、久しぶりに見る日本の風景。
第一印象は、「日本って、アジアなんだなあ。
」だったそうだ。
木造建築やアパートを彩る洗濯物などを見て、エキゾチック・ジャパンを感じたらしい。

しばらく東京に滞在してから、郷里の倉敷に帰る予定だ。

ひさびさの日本食。
千葉の親戚の家では、おばちゃんが、はりきってつくってくれた料理をごちそうになったらしい。
その後合流した私は、「他に何か食べたいものがある?」と聞いた。
はたして答えは、ラーメンであった。

日本人が海外旅行に行くとき、現地での食事に耐えられるかどうかが、最大の心配事の一つであるらしい。
くいしんぼうの私の家族は、私をふくめて、そのような心配をしたことはない。
他の人たちがカップラーメンだの、携帯コンロだのをスーツケースにつめているのを見て、首をかしげてしまうのだが、実際にこの手の人たちは多いらしく、飛行場などで、どんな非常食を持ってきたか、話に花を咲かせている光景をよく目にする。

ラーメンの源流は何処にあるのだろう。
日本中、どんな田舎町に行っても、ラーメン屋の一件は必ずあるのを見ると、そんなことすらもわからなくなってしまう。
それほどラーメンはニッポンの食生活に浸透している。

東京では、ラーメン戦争区なるものもある。
だが、ラーメン屋は数多くあれど、「うまいラーメン屋」となると、その数は少ないだろう。

私も、ラーメンは大好きだ。
私の好みは、細麺。
スープは濃厚でありながらさっぱりしていて、煮豚ではなく、ちゃんとした赤いチャーシューが入っていて、長ネギではなく、青いネギを散らしてほしい。
冬場は、トロミのついたスープもいいだろう。
たまには香菜などが入ったラーメンも食べたくなる。

よしんば、おいしいラーメン屋がたくさんあったとしても、今の自分の体調と、気候にあうラーメン屋をさがすのは、むずかしいのではないか。

となれば、やはり自分でつくるがよろしい。
このところ、気温の変化がはげしい。
こんなときこそ、パンチのきいたラーメンを食べて力をつけなければ。

ニンニク、しょうが、ネギ、ザーサイをすべてミジンに切り、ゴマ油で順に炒めていく。
ネギはたくさんの方がおいしいだろう。
これに、ごまペーストをくわえる。
ごまペーストは、あたりゴマとして、スーパーで売っているし、中華素材を売っているところがあれば芝麻醤として扱っている。
常温で保存できるし、ちょっと変わったごまあえなど、使う場面は多いので、ひとびん購入してみよう。

水をくわえたら、中華スープの素を入れる。
味見をしながら、トウバンジャンをくわえる。
もちろん私は死ぬほど入れる。
醤油少々。
これにゴマをたっぷりふりいれて、できあがり。
茹でた麺にそそげば、プロ顔負けのラーメンである。
なにも、トンコツやトリガラおつかって、何日も煮込んだりしなくても、おいしいラーメンはつくれるのだ。

ついでに、もっと簡単で安上がりなラーメンの作り方を紹介しておこう。

用意するものは、しょうゆ味ラーメン、もやし、以上。
もやしは45円くらいだろうか。
そのかわり、ラーメンは、生麺タイプのものを買ってこよう。

もやしを炒めたところに、水を分量どおりそそぎ、煮立ったら付属のスープの素を入れる。
片栗粉でトロミをつけ、茹でた麺にくわえてできあがり。

もやしの甘みと、トロミのついたスープが麺にからんで、じつにおいしいものである。
やれ、チャーシューだとか、ほうれん草だとか、ネギだとか、メンマだとか、いろいろ用意するよりも、簡単だ。
まな板いらずなのも、うれしい。

ただし、もやしは一袋全部つかってしまうと、いつまで食べても麺に出会えないという、たいへんストレスのたまるラーメンが出来てしまうので、注意しよう。



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