台所に立つことの動機は、やはり「お腹がすいた」、「おいしいものが食べたい」、それで十分なのだ。シャンソン歌手「藤原素子」が綴る、日々の、普通の食卓のレシピ

貧すれど鈍せず

朝食大尽

益子から野菜の宅配をしてもらい始めてから久しい。
ここの野菜は完全無農薬で安全ということもあるが、何より美味しいので野菜はほとんどスーパーでは買わなくなってしまった。

その時々収穫した、旬の野菜が送られてくる。
味がギュッと凝縮されていて美味しい代わりに、天候が少し狂うとたちまち内容に影響してくる。時には中身がスカスカの枝豆が送られてくることもある。本当に自然に作っているからこその現象。

芋虫が一緒に入っていることもある。虫だって、スーパーで売られているキレイな野菜よりも美味しいからついてくるのだ。
近頃は虫を発見しても、平気で窓の外に捨てられるまでになった。

食事のメニューを考えるとき、まずどの野菜を食べるのか考える。

バイトの前は、いつもしっかり食べて出かける。
途中でお腹がすくと、ネコの缶詰でさえ本当に美味しそうに思えてしまう。犬にやるハムを、失敬したこともある。

ご飯にみそ汁、今の季節ならみそ汁は玉ねぎとナス、油揚げも入れる。他にオクラなどさっと茹でて酢醤油をかけた一品に、メザシでも焼いて、かぼちゃの煮物が残ってたっけ。卵は目玉焼きにして、奈良漬か昆布か、最後は梅干しで・・・。

などとやっていると、普通に5〜6皿は並ぶし、鍋釜の類で洗い物も増える。
使ったそばから洗って拭いていくのでさほどの苦労とも思わないが、起きてから出かけるまでに2時間半もかかっていることを思うと、ふと我に返って、「人生なにをやってるのか?」と自問自答することもある。

さて、5日ほど留守にして帰宅した。
明日はバイトだし、買い物はしていない。

何かあるかと冷蔵庫を探すと、ピーマンとキュウリが少し。時間は深夜をまわっていたが、明日の為に準備してから寝よう。

ピーマンは素揚げして麺つゆに漬けて冷蔵庫へ。キュウリは縦に切って醤油・酢・砂糖・鷹の爪を混ぜたものに漬けてこれまた冷蔵庫へ入れて置く。さっさとやれば10分の事だ。

これで明日の朝には、夏にぴったりのひんやりピーマンの揚げ浸しとキュウリのピリ辛漬けが出来ている。
これにジャガイモとわかめのみそ汁に、冷凍してあるアジの干物でも焼くか。

朝食は何かと大変だが、一日の楽しいひと時でもある。
一日のなかの、たぶん一番生き生きしている時なんだと思う。



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