日々の出来事 〜Diary〜
#809 高木椋太さんのこと 2016年10月16日(日)01時01分
草月ホールへ。毎年パリ祭でステージをご一緒させていただいている高木椋太さんのコンサート。 リハーサルや楽屋で、いつもなにかしら話しかけてくれる心優しき紳士で、一度ソロコンサートを拝聴したいと思っていたのが、やっと叶った今夜でした。とにかく声が素晴らしく、声フェチの私はいつも唸ってしまうのです。 私のフェチはひねくれてて、ただ美声を好むのではない。そう、むしろ「アンチ美声」と言ってもいい。オペラやクラシックは別だが、シャンソンで朗々と歌い上げられて、本人はさも気持ち良さげで、そのあげくに歌詞は何も伝わってこない、などということが、ままあったりするものだ。 椋太さんの声は、フォルテもピアノも心地よく、しかもその声に頼ることなく注意深くコントロールしようとされているのが伝わってくるようで、そこがフェチの心をくすぐられるところ。思うに、それが、『完璧でないところの魅力』というものなのかも知れない。 今や、CGしかり、AIしかり、完璧なものはいくらでも作ることができる。友人曰く、「もう、未来」なのだそうだ。こうなると、人間の目指すところは、いかに「欠けさせていくか」ということになるわけで、絶世の美女よりも、どこか欠点があってもそれが愛嬌となる、というのが、人間に与えられた想像の力なのかとも思ったりする。いつも、椋太さんに「完璧です〜」と申し上げると、「いえ、まだまだです」とお答えになるのですが、そこの、『完璧でない完璧』をお伝えするのはなかなか難しいものです。 帰り道、見上げた月が美しい。聞けば、昨日が十六夜とのこと。満月もいいけど、今夜の月も格別です。
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