日々の出来事 〜Diary〜
#731 武士の妻 2012年05月07日(月)13時57分
子供の頃から、母の手料理で育った。 和食はもちろんのこと、デザートや家庭的な洋食など、当時珍しかった献立を食卓に用意してくれたものだ。子供ながら、フォークとナイフを苦心しながら使っていたように記憶している。 時代は変わって、東京などにいると、いまや世界中の料理が食べられるようになった。昔は手に入らなかったような食材も、当たり前のようにスーパーに並ぶ。テパ地下やコンビニに行けば、自分で調理などしなくても不自由なことはないだろう。
記憶を振り返ると、母も試行錯誤中だった。 煮魚の中心が生煮えだったり、ステーキだって、食べかけていたものをもう一度焼きなおすこともあった。火が通るタイミングのギリギリのところをねらっていたのだろう。このタイミングこそが、調理の極意なのではないか。 さっと湯がいた青菜、揚げたての天ぷら、じゅー、というフライの音、表面がクツクツ踊るグラタン、キュッと冷たい酢の物、フーフーッと吹きながら頬張る炊きたてのご飯・・・。 レンジでチンしたものでは味わえない家庭料理のヨロコビ。これはまさに母の教え。
母の記憶のもうひとつ。 大勢のお客が帰った後だったのだろうと思う。食器が洗い場にたまっていて、深夜のこともあり、「明日にしたら」と声をかけたところ、やはり片付けてから寝たいとの返事だった。 続いて話してくれたことを、今でも忘れることが出来ない。 曰く、武士の妻は、敵に踏み込まれた場合に備えて、いかなる時でもみっともない姿を見せたくないのだとのこと。
それから月日がたった。私の自炊生活も長くなった。 母の言葉を思い出すうちに、私も食事の後は、必ず皿も拭いて食器棚に片付けなければ気がすまないようになった。 しがない一人暮らしながらも、出来るだけキレイに暮らしたいと思う。
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