不定期更新!?藤原素子の日記帳です。

日々の出来事 〜Diary〜

#725 食いしん坊の食卓
2012年04月17日(火)14時20分
私の住まいの大家さんは、逗子に住んでいる。
出入りの激しい一人暮らし用の物件のなか、いつの間にか私だけが居座ったようになり、大家さんとも長年のお付き合いとなった。
何かと用があると立ち寄ってくれる。今年の冬にはワカメをいただいた。海岸にうちあげられたのを採って、ていねいに洗ったのち茹で、再び水洗いしたというもの。小分けにして冷凍して、磯の香り高い味噌汁の具として、何度も楽しませてもらった。
先日持ってきてくれたのは、ゾローっとした海草。5mmほどの太さの茎から、細く細く枝が無数に分かれている。全長40cmほど。色は濃い緑。
大家さんも、今年初めて魚屋で買ってみたそうで、名前も忘れてしまったとのこと。教えてもらったとおり、細かく包丁でたたくように切ると、粘りが出てくる。これをポン酢で食べると、シャリシャリとした食感と粘りが、いかにも健康的で美味。
いったいこれは何だろう。
・・・と、ハタと思い出したのが、私の敬愛する作家の壇一雄の料理を掲載した本。もう20年以上前から愛用しているものだが、たしかこれに似たようなものが載っていたような。
あった!写真も確かに同じものだ。
「ギバサ」または「バチモ」と呼ばれる。秋田や山形などでよく食べられるそうだ。
壇一雄は世界中を旅していて、珍しい食べ物や料理の著書も多いが、子供の頃は読んでも、見たことも食べたこともないものがたくさんあった。
今ではビーツの入ったボルシチだって、タンシチューだって豚の耳でも柿の葉ずしでも、周知のものとなったし、どこかしらで手軽に食べられるようになったが、それでもこのギバサのように、その土地でしか知られていないものに出会うと、無上の喜びを感じる。
近頃近所のパン屋のパンにハマっていて、ここのトースト用の山型食パンが絶品。バゲットも噛みしめるほどに旨味があり、これがなんでもない普通の小さな町のパン屋さんというところが、さらに嬉しいところなのである。
長く生きるのも、案外悪くないナァ、と思う。


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