日々の出来事 〜Diary〜
#720 『なめくじ艦隊』 2012年03月27日(火)02時38分
かねがね読んでみたいと思っていた本に出会ってしまった。 古今亭志ん生の、『なめくじ艦隊』。 当時の上野の様子から、下谷の見世物小屋の話、酒のこと、女房子供のこと、満州から敗戦後のこと・・・。「志ん生半生記」との副題ながらも、ありとあらゆる本質が描かれている一冊だ。 どん底の貧乏暮らし。沼だか池だかを埋めたてたところの長屋で、雨が降るたびに洪水となる。ひどい湿気に、巨大なナメクジがウヨウヨ攻めてくる。口を開ければ、蚊の大群を呑み込む。 あまりにひどい環境なので、家賃はタダ。他が次々に引っ越していったところに、それでも志ん生は住み続けた。 子供が生まれたものの、産婆さんに払うお金がなくて気まずい思いをしたとか、くず屋を言いくるめて質のものを高値で引き取らせたとか、どうしようもない八方塞がり。これこそ、まるっきり落語さながらの可笑しさだ。江戸という時代が、すぐそこにあるように近いものだったのだろうと思う。 この場所こそ、今や一番のトレンディスポット。「とうきょうスカイツリー」駅となった業平とくれば、これまたクツクツと笑えてくるのである。 もちろん落語についてのことも多く記述されていて、一言一言にウナらされる。 本当に勉強し、修行してきた人なんだ。 「粋」という言葉が多く出てくる。 つまりこれだナ。現代に置き換えるとすれば、「美学」。あるいは「道徳」。皆、現代人が失ってしまった感性だ。 貧乏と貧乏たらしいは違う。苦しい時があればこそ、喜びが人一倍感じられる。 私のバイブルとなる本が、また一冊増えた。
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