日々の出来事 〜Diary〜
#163 やり切れない思い 2006年09月17日(日)01時16分
この夏は、一人の人と別れた。 と言っても、浮いたハナシではない。今まで何度も登場してきた銀座の店の会長だ。 実子がいらっしゃらないので、週に1度ほど私がご自宅の掃除に通っていたのだが、実際はご飯をごちそうになったり、昔の銀座の話やらいろいろなことを聞かせてくれたり、私のほうがお世話になっているカタチだった。 何も歌えない私を雇ってくれたのが15年以上前。お互い長い付き合いで気兼ねもなく、何となく均衡を保っていたと思う。 それが、急に記憶が持続しなくなったのは、93歳になった去年の末ごろだったろうか。 待ち合わせ場所に行ってもいない。電話すると自宅にいる。 また、伺った翌日に、前日のことを忘れて待ち合わせ場所で待っていたりする。 去年までは自炊されていたのが、100%外食となった。作るのが面倒になったそうで、ガスの心配がなくなったものの、それから後は急速に衰えていった感じだ。 足が弱くなる。食べ物をこぼすようになる。気になることがあると、夜中でも朝方でも電話がかかってくるようになった。 ついに親族の方が出てきて「これからは私が面倒を見ます」と言う。そして、「もう会わないで欲しい」とのことであった。 理由は、「いろいろな他人が周りにいると混乱するから」だそうだ。 様々悩んだが、所詮は他人だ。遺産の問題もあるだろう。私は登場人物から身を引いた。 以来会長からは何度か電話がかかってきたが、それきりになった。 聞くところによると、郊外へ引っ越しさせるのだとか。骨まで拾うとのことだったが、どうか最後まで笑っていて欲しいと願う。 死という別れもあるが、それとは別な、なんともやり切れない喪失感を抱えたままの、寂しい秋になった。
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